十八歳の花嫁

「美馬さん、あの」


尋ねてみようと美馬を見上げたが……。
彼はスッと愛実から視線を逸らし、厳しい顔で中空を睨んでいた。


「失礼いたしました。西園寺愛実さんですね?」

「はい……そうですけど」


フルネームで愛実の名を口にしたのは初老の男性である。


「私は、美馬家の顧問弁護士、長倉秀三(ながくらしゅうぞう)です」


そう言うと、丁寧に名刺を渡してくれた。


「美馬弥生様から、あなた方ご家族と連絡を取り、愛実さんを自宅にお連れするよう申し付かって参りました。……彼に、何か聞かれましたか?」


長倉弁護士は探るようなまなざしで美馬と愛実を交互に見る。
その視線はかなり険しく、愛実は思わず美馬の後ろに隠れた。そして彼の上着の袖をギュッと掴む。
すると、美馬は愛実を庇うように立ってくれたのだ。
そのまま長倉弁護士の質問にも答えてくれた。


「数日前に偶然知り合っただけですよ。今日も今から、ふたりで食事に行くところです」


その返事に愛実はびっくりした。

数日前どころか、会ったのは昨夜である。
そのうえ“今日も”なんて……まるで何度もデートしている関係のようだ。

結婚の話は、祖母の弥生のためと言っていた。だが、弥生の計画そのものを、美馬が知っていては不味いのだろうか?
詳しい話はこれから聞く予定だったので、愛実には想像するしかない。


「ほう……食事に。藤臣くんも、随分女性の趣味が変わったようだ。大奥様もさぞかし驚かれることでしょうな」


銀色に縁取られた眼鏡を押し上げつつ、長倉弁護士の口調は明らかに美馬を軽んじていた。


「しかし、私が尋ねているのは愛実さんです。それとも、彼女への質問は君を通さねばならないとか?」

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