十八歳の花嫁

第7話 味方

第7話 味方





愛実が美馬家を訪れた翌日――。

学校から戻った愛実を待ち構えていたのは、美馬信一郎だった。


「やあ、愛実ちゃん。昨日はどうも。お母さんにデートのお許しをいただきたくて、ご挨拶に来たんだ。驚いたよ、お母さんには何にも話してなかったんだね。数日中に、おばあ様から話が来ると思うけど……。一応、僕からも説明させていただいたから」


そんな信一郎の言葉に愛実は焦った。

母が金の亡者だとは思いたくない。だが、貧しさは人間を変えるのだ。

一度は藤臣の提案を受け入れようとした愛実だったが、美馬家を訪れて状況が変わった。
藤臣は候補のひとりに過ぎず、弥生は彼との結婚を望んではいなかった。

それ以上に、結婚を受け入れたら愛実自身が弥生の相続人に指名される。それはいくらかの謝礼を受け取り、仮初めの花嫁になることとはわけが違う。
まるで財産目当ての詐欺を働くようで、簡単に藤臣の提案を承諾することができなくなった。

だが、一家の経済状態が困窮しているのは事実。

他の三人を選べば詐欺ではなくなるが、愛実は本物の結婚をしなくてはならない。
売春よりましだと言い聞かせてみても、一度、藤臣に傾きかけた心を修正するのは容易ではなかった。


「まあ、愛実さん。こんな素晴らしいご縁をいただいて、どうして黙ってらしたの? お母さんは反対しませんからね。こちらの信一郎さんは社長さんだと言うじゃないの。お若いのに立派な方だわ」


楽しげに笑う母の姿に、愛実は不安を覚える。

横から尚樹が姉の手を引き、


「どうなってるんだ? あの夜の人と結婚するんじゃなかったのか?」

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