十八歳の花嫁

第3話 欲情

第3話 欲情





思ったとおり、愛実の髪は漆黒でなんの手も加わっていなかった。髪に顔を埋め、ペパーミントの淡い香りが彼を包み込む。
愛実の身体には触れないつもりだった。なのに……美馬は一瞬で惹き込まれ、彼女の首筋に口づけてしまう。


(シャンプーの匂いに欲情するとは)


彼は信じられないほど気持ちが高揚するのを感じていた。処女に興味を持ったことなど一度もない。好みのタイプは男を悦ばせる術を持ち、立場を弁えることのできる大人の女。金ですべての片が付く女だけだ。

ところが、愛実を見ているうちに、なぜか追い詰めたくなり……。
行為は予想外にもエスカレートして、愛実の太腿に直接触れてしまった。
そこは条件反射のように固く閉じ、美馬の侵入を阻んだ。


(どうやら……処女は本当らしいな)


美馬は愛実と身体をピッタリ寄り添わせた。すると、彼の下半身は素直に反応し始める。


「コレはまた……信じられんな、こんな小娘に」


思わず声に出した瞬間……堪えがたい衝動が彼を襲った。津波のように理性を攫い、本能の海に引き摺り込む。美馬が抗い切れず、愛実の唇を奪おうとしたそのとき、スーツの内ポケットから携帯の着信音が鳴り響いたのだ。

美馬は勢いをつけ、少女から男の欲情を引き剥がす。
そして大きく息を吐き、携帯を取り出すのだった。


『社長、通報しました。数分でそちらに行くと思います。準備はよろしいですか?』

当然、瀬崎である。
準備などできているはずもない。ミイラ取りがミイラになる所だった、とは口が裂けても言いたくない。

『ああ、わかった』

美馬は携帯を切ると、もう一度深呼吸して愛実を振り返った。

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