十八歳の花嫁

第3話 距離

第3話 距離





今日でもう丸四日になる。

愛実はテレビの電源を切り、三人掛けのソファにゴロンと転がった。
西園寺邸と同じベルベットの布張りソファだが、色は優しいオフホワイト。しかも手入れが行き届いており、傷ひとつない。

リビングの窓からは巨大遊園地のロマンティックなお城が見え、愛実が寝泊りしているセカンドベッドルームの窓からは海が見えた。


(こんなところで、のんびりしてていいのかしら?)


藤臣に言われるまま電話をかけたが……弟たちはちゃんとご飯を食べているだろうか。
掃除は、洗濯は、そして新しい学校に移る手続きは誰がやっているのだろう?

信一郎に襲われたショックで、何も考えられずにいる彼女に、藤臣は言ったのだ。


『そんな顔で自宅に戻ったら、弟たちが心配するんじゃないか?』


愛実が洗面所の鏡で自分の顔を見たとき、その言葉に納得せざるを得なかった。

事件の翌日、都内の大学病院に連れて行かれた。顔を殴られていたので、頭部を中心に検査を受けるよう言われたためだ。結果は異常なしだった。
頬の腫れは昨日あたりから引き始めたようだ。
しかし、口元にはまだ青い痣が残っている。
上半身を中心に無数の内出血や擦過傷があったが、傷あとは残らないと言われたのだった。


あれからずっと、藤臣と一緒にこの部屋に泊まっている。

もちろん寝室は別々。
バスルームはひとつしかないため、愛実が使用するとき、藤臣は寝室から出て来ない約束になっていた。

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