十八歳の花嫁

朝はリビングで朝食は取り、藤臣は出社する。

定時には仕事を終え、ここに戻って来て一緒に夕食を食べるのだ。

一昨夜は館内を案内してくれ、併設のショッピング施設まで連れて行ってくれた。昨夜はホテルの周囲を一緒に散歩して……。

愛実は壁にかかったアンティーク調の振り子時計を見上げた。真鍮製の掛時計は、ベージュに統一された壁のアクセントになっている。
時刻は間もなく夜の七時。

美馬邸に寄ってから戻るので少し遅くなる、夕食は先に食べていなさい、と言われたが……ひとりでは食べる気にならない。


今日の愛実は、ネイビーのAラインロングTシャツ、下は黒いスパッツというかなりラフなスタイルだ。


(まだかな……美馬さん、早く帰って来て)


ひとりのスイートはもの凄く広い。

信一郎は入院したと聞いたが、藤臣の話では弟の宏志にも注意が必要だと言う。
それに、あの和威とてわからない。藤臣と争う意思はないと言っていたが、愛実を油断させる手ではないかと疑ってしまう。

色々なことが頭をよぎり、彼女はすべてが恐ろしかった。
今のままでは、ひとりではこの部屋から出ることもできない。


――藤臣が傍にいてくれなければ。


愛実の心は少しずつ、搦め捕られて行くのを感じつつ……。



バタン――。



扉の閉まる音を愛実は夢の中で聞いていた。

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