十八歳の花嫁

彼は自分の興味が三ヶ月も持たないとわかっていた。
財産を相続するまで、義務的に抱き続けるくらいはできるだろう。そして別れるとき、藤臣の愛が偽りと聞いても、愛実は傷つかず去って行くだろうか。

彼の脳裏に、泣きじゃくる愛実の姿が浮かび、胸が締め付けられた。


「お仕事、そんなに大変なんですか?」


愛実は心配そうに尋ねる。

純粋な気遣いであろう。わかっていても、彼の口から出た言葉は、


「そんな顔をしなくても、君がイエスと言ってくれたら、約束しただけの金を支払う用意はある」

「そういうつもりじゃ……」

「ああ……そうだな。すまない。色々あってね……。気分転換に、今から泳いで来ようと思うんだが。君も行かないか?」


言った後で、藤臣は墓穴を掘ったことに気づき青くなる。

だが、愛実の返事は――「まだ、背中の傷が酷いので」彼女は小さな声で、せっかく誘ってくださったのにごめんなさい、と付け足した。

その傷は藤臣の目にも焼き付いている。
完全に消えるには数ヶ月の時間が必要だ、と医者は言った。


「悪い……まだ、痛むか?」

「シャワーの時くらいです。手首の痣は薄くなったんで、やっと包帯が取れました。手首に包帯を巻いてると、自殺未遂だと思われてしまって」


愛実は小首を傾げて可愛らしく微笑む。
だが、藤臣には笑うどころではない。信一郎は全治三ヶ月と聞いたが、やはり別の場所を踏み潰してやればよかったと思う。


「君が行かないならプールはやめだ。こんな時間だから遠出はできないが。どこか行きたい所があるなら、私でよければお供しよう」


藤臣の言葉に愛実が口にした場所は……。

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