十八歳の花嫁

第5話 覚悟

第5話 覚悟





ふたりは毎夜、ただ一緒の時間を過ごしていたわけではない。

藤臣は最初のころのような脅迫めいた言葉は使わず、根気強く愛実を説得し続けていた。


――今回のことで、しばらくは信一郎も表立っては動けない。
だが君の決断が長引けば、ほとぼりが冷めたころにまた何か企むだろう。

卑怯なだけなら宏志も何をするかわからない。

和威はそんな愚か者ではないが、父がいない、わからないことを恥じていて、肝心なときに前に出ようとしないんだ。

私なら君を守れる。
相応の金を動かせるポジションにいる。

祖父は遺言で私を後継者に指名し、ほとんどの財産を残してくれた。一点に集中させることで美馬の牙城を守ろうとしたんだ。

昨今の経済危機は、高校生の君の耳にも入っているだろう?
そうしなければ守れない。

にもかかわらず、祖母は血の繋がりにこだわり、金も力も分散させるつもりだ。

本丸が傾けば、いったい何千人の社員とその家族が路頭に迷うことになるか……。
考えてみてくれ。
子供が生まれたばかりの社員もいる、家のローンや教育費に金のかかる社員も、親の介護にどれほどの金と人手がかかるか、君もよく知っているはずだ。

祖母が君を巻き込んでしまったことは、本当に申し訳ないと思っている。
だが、冷静に考えて欲しい。
君が高校を辞めて働くだけで、今の状況が打開できるか?
君は弟たちに、中学を卒業してすぐ、働かせるつもりなのか?

――と。

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