優しい胸に抱かれて
 3年前、出向という名の試練で日下さんがいなくなる前に投げつけてきた言葉たち。


『あいつが出向を先延ばしにしたのはお前のせいだ。現抜かしてる場合じゃないって気づいてやれよ。お前が邪魔してるんだよ、あいつの可能性を。俺が3年後戻ってきた時、かなりの差が付いてる。あいつは俺より出遅れてスタートするってことだ。それが、どういうことかいくらお前でも解らないわけないだろ』

『…ちゃんと解ってます』


 出向期間は3年。2人は同じ光が指す方向へしっかりと歩いていた。

 日下さんの楽しみを邪魔したのは私だった。彼の可能性も一緒に邪魔をしていた。

 解っていると言いながら、きちんと受け止められなかった。きちんと理解出来ていれば。


 そう後悔ばかりしているから、忘れられないどころか、何も出来ない。


 誰の背中も追いかけられない。誰にも頼れない。また、甘えてしまいそうで怖い。せっかく決心したのに、揺れ動かされる。
 
[昨日と同じ]では、なくなった。時間は確実に刻々と動いているというのに、私の時間は止まったままでいる。


 どういうわけか彼は2年で戻ってきて、2人は同じスタートラインに立っているというのに、私だけがしっかり前に進めていなかった。
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