計画的俺様上司の機密事項
「ずっと思ってた。夏穂はどうしてるんだって。仕事でたまたまこっちにくるときがあって、もしかしたら夏穂がいるんじゃないかって訪ねたらお母さんが出てくれてな」


「え! そうだったの?」


シンちゃん、わたしの大学時代にこっちに帰ってきてたんだ。

お母さん、内緒にしてたなんて。

シンちゃんに会えたなら旅行の日程ずらせばよかったな。


「その時は夏休みで友達と旅行にいってたんじゃないかな。でも、夏穂のお母さんと懐かしい話に花が咲いたよ。夏穂が会社の内定もらったと喜んでたって。オレのこともずいぶん心配してくれた。それから連絡先を交換したんだけど」


「お母さん、シンちゃんと連絡取り合ってんだ。教えてくれないなんてひどい」


「お母様のこと、悪く言うな。オレの仕事のことがあって夏穂に期待かけすぎてこっちに戻ってこれなかったら困るって判断したんだよ」


期待かけすぎって、そこまで考えてくれてたなんて。


「独立を考えて、いずれはこっちに戻ろうとしてた。だけど、まだ若いし東京で実力積んだとしても一人で食っていけそうにもないからな。で、おやじに話をしたら、仕事のこと、常務に話をしてやるといってくれてな。それが今の会社」


そっか。だから常務と話があったんだ。


「面接受けにいった帰り、まだ泊まるところがなかったから常務に相談したら、資料室空いてるから好きに使って、って言われて」


「だから寝てたの?」


「片付けして少し休んでたら、まさか夏穂にあんな形で再会するなんてな」


「おかげでシンちゃんに助けてもらったけど」


シンちゃんの顔をみて、わたしが笑うと、


「あの時は気持ち、複雑だったんだからな」


と、シンちゃんは食べかけのチキンステーキを頬張った。
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