計画的俺様上司の機密事項
「風呂どうだ?」

すりガラスの向こうに人影が見える。

すりガラスから声がする。

シンちゃんだ。


「エッチっ! 覗こうとしたでしょっ!」


「覗いてほしかったのか?」


「覗いてほしいだなんていったわけないでしょ」


「まあいい。ゆっくり浸かれ」


そういって人影がなくなった。

もしかして本当に覗きにきたんじゃないだろうか。

おやじ状態のシンちゃんだったらありうるだろうな、と思ってせっかく褒めようとしたのに、腹立たしくなった。

長湯に浸かっていたらのぼせそうになったので、風呂から上がり、タオルで体を拭く。

これもふかふかに仕上がっているタオルだった。

タオルから香ってくる柔軟剤のいい香りに浸る。

昔、この香りを嗅いだはずなんだけどな。

また昔のことを思い出すと、頭が痛くなりそうだから、やめておいた。

下着をつけ、パジャマに袖を通し、居間へと向かう。

そこでシンちゃんが入り口に近いダイニングテーブルの椅子に腰掛けてこちらを伺っていた。


「きれいになったな、夏穂」


涼やかに笑うシンちゃんに、さっきのおやじっぷりな素振りはなく、あくまでさわやかなシンちゃんだった。


「水、置いておいたから」


ダイニングテーブルに小さなグラスに水が注がれていた。


「夏穂、まだ髪、濡れてる」


そういって、シンちゃんは立ち上がると、ふかふかのタオルで頭を軽く拭いてくれた。


「あ、ありがとうございます……」


大きな手で髪の毛を拭いてくれるのは美容師の男性の人だけだったから、なんだか恥ずかしくなった。
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