計画的俺様上司の機密事項
食事を終えると、シンちゃんがジャスミンティーをいれてくれた。

独特の香りに癒されつつ、ひとたび飲むたびに口の中に残る濃い味付けや油っぽさをなくしてくれた。


「シンちゃん、今日はありがとう」


「楽しめただろう。天気のいいときはこういうことも必要だ」


「んー、たまにはね」


「外で飯とか、おおっぴらにできなくなるのかあ」


「え?」


「オレがお前の上司になってからだ」


そうだった。10月にはわたしの上司になるんだ。

その状況で外でのんきにやっていたら、困るのはシンちゃんだ。

わたしとのことで余計な疑いをされたら仕事に支障をきたすだろうし。


「あー、買い物忘れた」


「なにをですか?」


「夏穂の下着。ちゃんとかわいいのつけろよな」


「ちょっとっ! そんなことまで口出さないでよ、シンちゃんのエッチっ!」


「はいはい、エッチなおじさんですよ」


がはは、と笑いながらシンクにたまった食器を片付けている。

外で見せたあのさわやかシンちゃんはどこへ行ったんだか。

せっかく一緒に出かける機会をつくってくれたのに、よそよそしくしなきゃいけなくなるのか。

ちょっとせつなくなった。
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