彼が嘘をついた
「おはよう。
あっ、佐久間さん。
会議の会場の件で話があるので、一緒に来てもらっていいですか?
大石部長には、私の方から連絡しておきます」

「あっ、はい。分かりました」

そのまま兄は、会議室へと向かう。
私も、兄の後について行く。

「あっ、遥先輩。
湯呑みって、いくつ必要ですか?」

途中の給湯室で、陽菜ちゃんに呼ばれた。

「えっ…?
恵、まだ来てないの?」

今日の会議の人数は、大石部長と恵が把握しているはずだ。

「はい。あっ、いえ…。
恵先輩、様子を見に来てくれて、すぐに戻っちゃいました」

「会議の出席者は、17名のはずです。
あなたは確か、受付の小泉さんでしたね?
湯呑みの準備は佐久間さんに任せて、受付に戻ってください」

「えっ…、でも」

「陽菜ちゃん。
佐久間副工場長の言う通りにして。
恵には、すぐに連絡しておくから」

「はい、分かりました」

それからすぐに会議室に行き、まずは兄に受付の恵に電話をしてもらった。

会議の出席者は本社の役員を含めて、兄が言った通り17名だった。

「遥」
兄が私の名前を呼んだ。
社内では、私が会長の身内と分からないように気を使って、他の社員と同じように"佐久間さん"と呼んでいるのだけど。

「なぁに、お兄ちゃん?」
私も、兄に合わせて返事をした。


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