彼が嘘をついた
"妹"としての私に話があると、直感的に感じたから。

「…あぁ。大樹に聞いたんだが、さっきの…五十嵐くんと付き合っているのか?」

「えっ…?」

いきなりの質問に驚いた。驚き過ぎて、考える間もなく「うん」と頷いていた。
でも、すぐに
「…まだ、付き合いはじめたばかりだけど…」
と、言い訳めいたことを言ってしまった。

「……………」

「……………」

なんだろう…?
沈黙が怖い。

「良かったな!
仕事も真面目だと聞くし、いいヤツだと大樹が言ってた」

「…うん」

兄に、自分の"彼氏"を褒められるのは、なんだかくすぐったい。
しかし。
兄が本当に話したかったのは、このあとのことみたいだ。

「そろそろお前の存在を社内で公表したいんだけど…」

「えっ…?」

「大樹は、了承してくれた。
まぁ、お前次第だが…。
名前は出さないでも、"社長の身内が本社にいる"ってことは、この会議中に公表するつもりだ」

「…それは、決定なの?」

「あぁ。これ以上、大石部長と、その娘に好き勝手させられないからね」

「……………」

「それで、会議中に遥に調べてもらいたいことがあるんだ」

そう言って、兄は私に本題であろうお願いをした。

「…結果次第で、公表するから」
最後に兄は、そう宣言した。




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