彼が嘘をついた
「庶務課にお願いして、松竹から送ってもらいました」
兄は答える。

「…那須支店の、副工場長のあなたが、なぜ、そんなことんする必要があるんですか?」
大石部長はイヤミで対抗する。

「大石部長もご存じだと思いますが、俺は近い将来、この会社の役員になります。
今は那須にいますが、最近、本社の総務部長の噂がよく耳に入りまして…それも、良くない噂が」

「……………」

「受付に、娘の恵さんが入ってからは特に、えこ贔屓が激しいと…。
…噂が嘘だと思いたかったのですが、事実のようで残念です」
兄は、正論で攻めた。

「あなたみたいな坊ちゃんに、何が分かりますか?
せっかくの機会だから、娘にも美味いランチを食べさせたかったんだ」
部長は、苦し紛れに言う。

「…いいですよ。
その代わり、その恵さんのお弁当代は、恵さん本人か、あなたに払ってもらいます」

「……………」

「…今回、松竹の弁当にしようと言ったのは、大石部長だと伺いました。
社長も、専務も、その他の役員も…うちの夏の新商品を味見をしようとしていたらしいのですが…。強引に、松竹さんの弁当にしたみたいですね。
…経理課を担当する総務部長として、この3日間の松竹のお弁当を、無駄な経費とは考えないのですか?」

「……………」

< 32 / 198 >

この作品をシェア

pagetop