彼が嘘をついた
「あっ。答えはいりません。この行動が、答えだと思うので」

「……………」

「1つだけ、忠告しておきますね。
我社の、親族による経営が面白くないとは思うけど、しばらくこれは続くから。
それと、本人がイヤがるので名前は伏せますが、本社内に俺の親戚が2人ほどいます。
彼らも、近い将来、役員になる人たちです。
あなたの不審な行動は、逐一、俺と社長の耳に入ってきます。
なので、今後は十分、ご注意ください」

「……………」

会議室内は、沈黙に包まれた。

大石部長にいたっては、もう反論も出来ないみたいだ。

兄の方を見ると、目が合った。
ふと視線を反らすと、私を見つめていた父と目が合った。
2人とも、私を見ていたらしい。
2人に分かるように、私は"はぁ"とため息をついた。
そんな私を見て、父は微笑む。
そして、

「さぁ、せっかく大石部長が頼んでくれたお弁当、温かいうちに食べちゃいましょう!
午後も、定刻通りに始めます。
大石恵さんも、お食べください。
今回だけは、会社から払いますのでご心配なく。
他の庶務課の皆さんも、昼食にしてください。
お茶なら、各自でやりますから…」
私たち(美鈴先輩·私·陽菜ちゃん)を見ながら言ってくれる。

私たちは顔を見合わせると、代表して美鈴先輩が
「それではお言葉に甘えて昼食に行って参ります」
と言ってくれた。
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