彼が嘘をついた
ちょっと待って!
まだ付き合いはじめたばかりなのに、なんでいきなり"結婚"なんて言葉が出てくるの?

「高野さんの事務処理力は凄いよな。
将来、大樹を支えるのに何の問題もない」

「あー、そうだね」

兄の言葉に、簡単に答えるヒロくん。
叔父さんも、叔母さんも、笑顔で聞いている。

そして、
私の思いなど考えもせず、父がトドメを刺す。

「遥と大樹の結婚はともかく、年末にはお前たちが俺の娘と甥だと公表するから」

「……………」

「……………」

「……えっ··?ちょっと…」
反論しようとする私を遮るように、更に兄が驚きのことを言う。

「…それに急だけど、8月1日付けで人事異動をすることにした。
総務部の大石部長が名古屋支店の製造に降格。
空いた部長の席には、営業部から鈴木部長に入ってもらい、その営業部の部長には俺がなる。
俺の後任の那須支店には、名古屋から小張に異動してもらう。
あと、大石恵は工場に異動で、遥は代わりに受付に入って。
庶務課には工場から西崎楓恋(ニシザキ カレン)に来てもらうから」

「……………」

「……………」

「…あっ!あと、大樹は新しい営業先に行ってもらう。
"スーパー五十嵐"だ。
頑張って年内に契約出来るようにしてくれ」


< 46 / 198 >

この作品をシェア

pagetop