彼が嘘をついた
「あっ…、本当だからな。
誰かの手料理なんて久しぶりって言うのもあるけど、マジでうまかった」

「…えっと…、真由子は?
ご飯、作らないの?」

「あー、うん。
真由子は、全くと言っていいほど作らない。
どっちかと言えば、俺の方が作るよ。
…新メニューの試作とかもあるし…」

「……そうなんだ」

「あぁ。
そう言えば大樹は?
あいつは料理するの?」

「ヒロくんは、チャーハンやカレーみたいな、簡単なものならたまーに作るよ。
…でも、真由子が料理出来ないなら、これから大変かも…」

「…どうして…?」

「ヒロくんのお母さん、すごく料理が上手で、"女性は家族の健康を守るために、しっかり料理が出来ないとダメ"って考えなんだ。
もちろん、ヒロくんのお父さんも同じ考え。
だからヒロくんも、料理が出来る女性が好きなはずだよ」

「…それは真由子にはハードルが高いな」

「…そうみたいだね。
今日はどうしているんだろう?」

「多分、近くの蕎麦屋に行ったと思うよ。
真由子、家や会社近くの飲食店の情報はスゴイから」

「…そうなんだね。
でもヒロくん、基本的に外食はあまり好きじゃないの。
…今日は、お昼も外だったし、夜は行かないんじゃないかな…」

私がそう言うと同時に、インターホンが鳴った。


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