オトナチック
でも、私のせいで杉下くんにこれ以上の迷惑をかけたくなかった。

新一に振られて家を追い出された私を、杉下くんは住むところを提供してくれた。

それだけでも充分なことなのに、私のせいで杉下くんはケガをした。

もし全ての出来事が新一がやったことならば、全ては私の責任だ。

だけど、新一がやったと言う証拠が見当たらない。

その証拠が見当たらないうえに、新一に訴えてもシラを切り通されるのがオチだろう。

「高浜、どうしたんだ?」

杉下くんの声に、私はハッと我に返った。

「あっ、うん…。

何でもない…。

早く手当てをしようか」

そう言った私に、
「ああ、そうだな」

杉下くんは返事をした。

心の中で杉下くんに謝りながら、私たちは部屋へと足を向かわせた。
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