オトナチック
滑り落ちた刃物を杉下くんはハンカチで包んで拾いあげた。

「わかったなら、もう2度と芽衣子に近づくな。

2度と芽衣子の前に現れるな。

もう2度と、俺の婚約者に手を出すな」

念を押すように杉下くんが新一に言った。

新一は悔しそうに唇を噛んだ後、逃げるようにオフィスから立ち去った。

その後ろ姿を見送ると、
「高浜、大丈夫か?」

杉下くんが私に歩み寄ってきたかと思ったら、声をかけてきた。

私のことを“芽衣子”と名前で呼んだのは、気のせいだったのだろうか?

そう思っていたら、
「杉下くんと高浜さん、つきあっていたんですか?」

「いやー、知らなかったなー」

それまで静かだったオフィスがザワザワと騒ぎ始めた。
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