君が罪なら俺は罰を受け入れる
『忘れんなよ、俺の存在理由』
俺たちが座席に座る頃にはもう本編が上映されていた。
当たり前のように隣同士に座る俺ら、席はちょうど真ん中辺りで、わりといい席だと思う。
薄気味悪い家がスクリーンに映し出され、それはもうホラーの世界観に引き込まれていくかのようだった。
『……すいません』
俺はあまりにも映画に引き込まれていたのだろうか。
誰かが階段を登って来たとか全然知らなくて、突然の声に俺は声の主の方へと顔を向ける。
(………………は?)
俺も驚き、そして多分、相手も同じー……
(………なんで元彼がここに……)
俺はハッとなって、隣のバカ女の方へと顔を向けた。
元彼の声。
いや、今でも忘れられない位に大好きな人の声。
そりゃ、聞き逃す訳はないよな……
元彼の声に、いやもしかしたら階段を登って来た時からバカ女は気付いていたのかもしれないー……
『ちょっと見えないんですけど!』
なかなか元彼とその友達が移動しないので、俺のちょうど真後ろに座っていた人に声をかけられた。
『………すみません』
元彼と友達はそう言って、俺の前を通っていく。
そしてバカ女の前もー………
そんなの一瞬だったんだけど。
でも、バカ女は元彼を見つめ、元彼も通り過ぎた後で一度だけ振り返った。
けれど、今は映画の上映中ー……
二人は言葉を交わすこともなく、元彼はそのまま先へと進んでいった。
バカ女は少しだけ元彼の背中を見つめた後、俯いた。