意地悪くんと鈍感ちゃんの初恋物語
名前を呼んで手招きをする。
呼べばすぐ来るなんて、本当、無邪気な小動物みたいだ。

「どうしたの?
店になにか忘れ物? 
取ってこようか?」

「違うわっ、お前じゃあるまいし」

見当違いなセリフに、つい言い返してしまう。

なによ、もうっ! 人が折角……。
ぶつぶつと頬を膨らませている。

本当、可愛いやつ。

「さっきはおばさんにまだまだ待つって言ったけど……。
俺、そろそろ限界だからな……?」

いい加減、少しで良いから気がついてもらいたい。
毎日学校で、それに放課後もこうやって過ごしているんだから。

「……?」
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