好きと言えなくて
その日撮影も何とかこなし、喜村マネージャーの車でマンション迄帰ろうとしていた時、喜村マネージャーがとんでもないことを言った。


「綾華さんすみませんが明日雑誌の撮影があるので、よろしくお願いします。」


私?


眠くてはっきり聞こえなかったけど。


私より先に田城ちひろが反応した。


「綾華は映画だけの仕事にしろと言ったよな。」


「はい、でも社長が映画の前に顔を出しておく方が映画の宣伝になると言うので。」


田城ちひろがいきなり喜村マネージャーの胸ぐらを掴む。


運転中だよ。


「車を停めて下さい。」


車が停まると同時に田城ちひろが怒鳴る。


こんな所で喧嘩したら目立つ。


「喜村マネージャー、そのこファミレスに入って下さい。」


一気に眠気が覚めた。


「綾華さん社長には逆らえないんです。本当に申し訳ないんですが、明日の雑誌撮影お願いします。」


こうなるのが嫌だったのに。


社長は最初からこんなる事を考えていた。


映画のヒロインが素人で、喜村音楽事務所所属となればそれだけで話題になるのだ。


大きなため息をついた。


逆らえないのなら、腹をくくろう。


「分かりました。明日の雑誌の撮影は引き受けますが、あくまでも喜村マネージャーの顔を立てるだけですからね。」


深夜のファミレスにもかなりのお客様がいて、こちらをチラチラ見てるし、早く帰ろう

「俺も一緒に行くから。」


え、思わず声が出た。


明日は映画撮影は休み。


でも、何で田城ちひろまで行くんですか。


来なくていいと言おうとしたら、睨まれた。


怖いんですげど。


私は何もしてません。












< 35 / 51 >

この作品をシェア

pagetop