好きと言えなくて
そんなに泣いたら目が腫れて、明日の撮影に差し支えると言われても、止まらない。


これはお芝居なんだと言われても、自分の気持ちがコントロール出来ないのだ。


田城ちひろは慣れたもので、カットがかかれば平然としてるし。


さっきまでのあの情熱は何処へ行ったのか?


お芝居だから、それが当たり前なのだろう。


控え室で着替えていると、メイクさんたちの話し声が聞こえた。


田城ちひろがこの世界に入ったのは、結婚まで約束をした彼女に裏切られたからだと。


そうだったんだね。


風間智尋は何処にもいない。


昔の話をすると嫌がるし、智尋兄を振ったのはどんな人なのだろうか。


きっと大人で綺麗な人なんだろうな。


智尋兄に告白しないうちに失恋決定だ。


又、涙が溢れて来た。


田城ちひろは笑っていても、瞳の奥は決して笑ってなんかいない。


冷たい目で何度も見下ろされた。


綾華ちゃんならきっと智尋の凍りついた心を、溶かしてくれると信じてる。


咲良母さんに言われたらことばを思い出していた。


私にそんな事が出来るとは思えないけど。










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