好きと言えなくて
一人で出かけるつもりだったのに、田城ちひろが一緒に行くと言い出した。


浅草と東京タワーへ行きたいといってるのに、俺はスカイツリーに行ってないからと、結局スカイツリーに行く事になってるし。


何処までも勝手なんだから。


もうどうでも良くなった。


もしかして、又あの変装して行くのでしょうか。

必死に変装する田城ちひろを見て、笑ってしまう。


どうしてタクシーで行くの。


地下鉄に乗りたかったのに。


「お前はバカか。芸能人は地下鉄には乗らない。」

本当に?

騙された気もするけど、まぁいいか。


タクシーを下りて人混みの中を歩いていると、綺麗な女の人とすれ違う。

あれ、もしかして清香さん?


清香さんが振り向いて、田城ちひろに近づいてきた。

田城ちひろが驚いているのが分かる。


こんな所で揉めたらかなり目立つ。


何処かで話した方が良いと思い、田城ちひろに二人で話すように伝えると、その必要はないと言われた。


田城ちひろは清香さんを無視して歩いて行く。

もうどうしてそんなに聞き分け悪いの。


子供じゃないんだから。


清香さんが私と話をしたいと言うので、仕方なく近くのカフェに入ることにした。

スマホで清香さんといることを、田城ちひろに伝えて。

しばらくお互い無言のままで、先に話し出したのは清香さんだった。


「あなたは智尋の事をどう思ってるの。私と付き合ってた時も、あなたの話ばかりして喧嘩がたえなかった。」


突然そんな事言われても答えようがない。


「兄妹としていたのは二年だけで、しかも血の繋がりはない他人。あなたも智尋が好きなの。」


立て続けに色々言われて、頭がついていけない。


「気持ち悪いわよね。8才も年下の女子を好きだなんて、ねぇ、そう思わない。」

智尋兄が私を好きだと言いたいの。


それが本当なら嬉しいけど、智尋兄から直接聞いた訳ではないから、信じる事は出来ない。


「失礼だと思いますが、あなたは今結婚されてますね。智尋兄が今でも好きなんですか。」


彼女が驚いた顔で私を見た。


「あなたはみたいな子供には私の気持ちは分からないわよ。お願いだから智尋の前から消えてよ。」


「消えるのはお前だ。」


え、智尋兄はいつからいたの。


「清香と付き合った二年間はそれなりに楽しかったけど、清香の我儘に付き合うのに疲れたから、別れた。」


綾華帰るぞと腕を捕まれる。


もっと話さなくて良いのかな。


私は今でも智尋が好きだと言う清香さんに、田城ちひろが爆弾を落とした。


清香は風間智尋の俺じゃなくて、田城ちひろが好きなんだ。

有名俳優の元カノだと自慢したいのだろ。

結婚の約束をしてただなんて、嘘までついて、いい加減にしろよ。


これ以上俺に付きまとうのは止めてくれ。


田城ちひろよ清香さんのことばをさえぎって、カフェを出た。

強く捕まれた手が痛い。


でも、智尋兄の心はもっと痛いと思うと、涙が溢れた。


「なんで、綾華がは泣くんだよ。」


俺が泣かせたみたいだとブツブツ文句を言いながら。


智尋兄はちゃんと清香さんを好きだったんだと思う。


智尋兄の好きな気持ちと清香さんの好きが少しづれていたのかな。


恋愛経験がない私には分からないけど、好きな気持ちはお互い一緒がいい。


風間智尋の気持ちをしりたいけど知るのが怖いから、今はまだこの関係でいいし。


スカイツリーはものすごい人で、来るんじゃなかったと田城ちひろに文句ばかり言われた。












< 47 / 51 >

この作品をシェア

pagetop