名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
この学校は恋する人々に優しくない、と常々思う。


小説や漫画や映画では、特に恋愛ものなら、青空と体育もしくは部活をしている想い人の姿が教室から見えてきゅんとするのが、王道中の王道、定石なのに。


一生懸命走っていたり、少し古びたバスケのゴールで練習してたり、そういうのが青春の重要な要素であり一部であり、高校生活を華やかに彩るものだと決まっている。


ふと目を向けた窓の外には、かっこいい好きな人。

……なんて素敵なんだろうか。


うちの高校はどうかというと、見えるのは青空と、所狭しと並べられた自転車の数々。

つまり駐輪場。ひどい。


いくら自転車通学の生徒が多くて場所の確保が大変とはいえ、これはちょっとあんまりじゃないのかなあ。青春の香りが少しもしない。


なんてひどい学校なのか。


いかんともしがたい虚しさに、なんでろくに下見もしないで近いからってこの学校にしちゃったんだろうわたし、と当時中学三年生だったあほな自分が恨めしくなるのも、仕方がないというものだった。
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