オフィス・ラブ #Friends
この営業員とは、どうも合わないなあ。

うっかりさんて、どうやっても直らないんだよね。

営業でそれは致命的だろうから、そういうのが許される部署に行けばいいのに。

だけど、うっかりが許される部署って、どこだろう。


そんなことを考えていると、内線が鳴った。



「雑誌第3、石本です」

『やあ』



柔らかいけど濡れてない、昼間のほうの声。

ぎくっとする自分が、なんか悔しい。



『日曜、空いてる?』



残念なんだか幸運なんだか、空いてる。

肯定すると、遊んでよ、と気負いのない声がした。


これ、デスクで喋ってるんだよね。

こんな会話して、周りの誰も気にしないんだろうか。

いつもこういう冗談めかした調子だから、もうみんな慣れっこなんだろうか。



「いいですよ」

『じゃ、今から言うところで待ち合わせね』



ペンをとって、手元の書類に書きつける。

降りたこともない駅に、朝早くの指定。

なんじゃこりゃ。


着ていく服を決めるために、ちょっと情報をもらおうと訊いてみた。



「屋内ですか、屋外ですか?」

『両方だなあ』

「歩く?」

『やる気によるけど、そこそこ』

「パンツとスカートなら、どっちがいい?」

『断然、スカートだね』



あなたの好みを訊いたんじゃ、ないよ。

まあでも、そう言うからには、スカートでも立ち回れる場所なんだろう。

低めの丸っこいパンプスに、それに合うカジュアルなワンピースあたりかな。


どこにつれてく気だろう。

なんだかちょっと、楽しみになっている自分がいた。



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