雪見月
……ああ、やはり助けてはくれないのだ。


やさぐれた心が、そんな自己中な反駁さえ思う。



交通量が少ない訳じゃない。


街中だし、通学路だし、社会人だってよく通る道だ。




でも。


皆周りに無関心で無感動で、悪気なく放置する。


道端に倒れているっていうのに、あの子しか。


さっきの子一人しか声をかけてはくれない。




「やだ、あの人座り込んでるよ?」

「え、汚い、何やってんのかな」


立てないんだよ。


「おい、見ろよ」

「うっわ、イタいわー」


痛いよ足がな。


通りすがりの女子高生も、

大学生らしき集団も、

会社員のスーツのおっさんも。


ちらりとこちらに視線を投げはするくせに、


クスクスと忍び笑いをして、

げらげらと指を差し大笑して、

密かに眉をひそめて。


存在は認知しても一線を引いたまま、境界を越えては来ない。


おそらく無意識に自分を優先する。




ぐるり、目が回ったかのような錯覚がして。


ふいに雑音が膨張した。
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