となりの専務さん
「……きゃぁぁぁあ゛ァァァアッ‼︎⁉︎」

私は思わず、すごい悲鳴を上げてしまった。


「どうした広香⁉︎」

私の声を聞いた凛くんが、すぐに私の部屋まで来てくれて、私の部屋の玄関の戸をドンドンと叩いた。

私はすぐに玄関を開けて。


「助けて‼︎」

思わず、凛くんに抱きついてしまった。


「お、おい⁉︎ ひ、広香⁉︎」

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」

「は?」

「っ、キ!」

「……ゴキか⁉︎」

察してくれた凛くんは、私の体を剥がし、ひとりで部屋の中へと入ってくれて。


「あ、いた」

その声とほぼ同時に、パシン!という音が聞こえた。


「おーい、退治したぞ」

凛くんが部屋の中から、玄関にいる私にそう声をかけてくれる。


「あ、ありがとう! ちなみに、なにで潰した……?」

「そこにあった新聞紙だけど、よかったよな」

「う、うん、いいっ、いいっ」

「じゃあこれゴミ袋に入れて……って……」

凛くんが、なぜかそこで黙ってしまった。


どうかしたのかな、って思った瞬間。


「……あ!」

「広香!」

「は、はい!」

「なんだよこの壁の穴‼︎」

バレた‼︎



その後、私は部屋に入り、凛くんに事情を説明した。
部屋にふたりきり、とかそういうのは気にしてる場合じゃなかった。

幸い、大家さんは出かけていたみたいで、さっきの私の大声も、凛くんの大声も、大家さんに知られることはなかった。
< 128 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop