となりの専務さん
「まあ、あれだね」

専務は私の頭から手を離しながら言った。

「給湯室での会話をすべて聞いたわけじゃないからあくまで推測だけど、仕事中に君が古谷係長にコーヒーを淹れようとしたらそれを止められ、君が食い下がったら月野さんが怒って、月野さんと鹿野さんがいっしょに君に嫌味を言ったってとこかな」

「!? なんでわかるんですか!?」

エスパー!? 専務はエスパーですか!?


「なんとなくそう思っただけだよ。月野さんが古谷係長と仲よくする女性社員に態度がキツいっていう話を、聞いたことがあったから。その話、あらかじめ君に言っといてあげたらよかったね。ごめんね」

「え! いえいえ!! そんなとんでもないです!!」

私は顔の前で両手をぶんぶんと振り、「専務が謝ることではないです!!」と伝えた。


……でも、そうか、そうだったんだ。私、恋愛経験なさすぎてそういうのにほんとに気づかないんだよね……。


「……けど、それだけの情報でコーヒーのくだりまで当てちゃうなんてすごいですね」

「それもなんとなくだけどね。君、しっかりしてるし真面目で素直だから仕事面で怒られるとかなさそうだし」

私の言葉に、専務はさらりとそう答えてくれた……。


……今、自分自身が自分のことに否定的になってるからかな……さらりと言われたその言葉が、社交辞令的なものだろうとはわかっているけれど……それでも、なんだかすごくうれしかった……。
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