エリート上司と秘密の恋人契約
聞こえた言葉が咄嗟に理解できなくて、「今、何て?」と聞き返すと……


「俺と付き合わないかと言ったんだけど、返事は?」


「は、え?へ、返事って……」


思いっきりパニックになった私は、挙動不審と言われてもおかしくないくらい、おかしな反応をしてしまう。

自分でもなぜか分からないけど、持っていた黒いトートバックを開け、濃いピンクの財布を取り出す。

ハッ!なんで、ここで財布を?

はっきりいって、意味不明な行動だが、それだけ動揺したということだと分かって欲しい。

6階から1階まで降りるのには時間がかからなく、財布を手にした姿で、エレベーターのドアが開かれる。

幸いそこには誰もいないかったから、おかしな格好を見られることはなかったが「お金くれとは言ってないよ」と諸橋副課長に笑われてしまう。

ドアが閉まる寸前に急いで降りて、なぜか出してしまった財布をバックに戻す。


「あ、ごめんなさい」


諸橋副課長は、既に行ってしまったものと思っていたから、ぶつかったことでまだそこにいたことに気付いた。
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