声が聞きたくて


リビングへのドアを開けようとしたら
何かが動いているのに気がついた


そして、獣のような呼吸



うちでは絶対ありえない
耳障りな音だ


「ん……はっ、はっ、んっ、はっ……」


恐る恐るドアの隙間から中を覗く
後ろ姿の人、それが男だとわかった

そして、男の下にいるのが……妹の夏樹
夏樹は……気を失っているのか
ただ、男が動く反動で動いてるだけ

ソファには、父が無残な姿で横たわり
床には母らしき手が……
見える壁には血が飛び知っている


「……っ、はっ、はっ……んんっっ!」
「……んっ、はぁ……はぁ……」


男はゆっくり立ち上がった
そして近くにあったティッシュで
自分の物を拭いていた


……あっ……、何?
私……逃げ……なきゃ……
そう思って後ずさりをする

ゆっくり、ゆっくり……

ゴンっ!


廊下にあった植木に足をぶつけてしまった


気がついた時には遅かった
リビングのドアが開き
さっきまで夏樹の身体を揺らしていた男の目が私を捉えていた
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