声が聞きたくて


あの日、私は処女を失い、声も失った
医者は精神的なもの
いずれは戻るだろうと言っていた

けど、5年経っても戻っていない
もう自分の声も忘れてしまった



私の家族は……誰もいない
遠い親戚が生命保険を目当てに何度も私の前に現れた


何よりも……この家に居たくない
この家で……私の家族は殺された


私は家を売り払い
両親が残してくれたお金と生命保険で
中古の分譲マンションを買った
家具も全て買い替え

家族との思い出の品を一室に納め
私は……独り暮らしを始めた


失声した
だから接客なんて無理な話
辞表を出した日、社長は言ってくれた


「内勤の子が急に辞めちゃったんだ、事務所で働かないか?」


社長は……いつも優しい
初めてかな……家族を失ってから
初めて泣いた
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