小悪魔な彼の想定外な甘い策略
『……だ、……い出さ……いの?……』

マダ、オモイダサナイノ?


……いや、違うな。うーん。わかんない。

行き先を告げてから、一人、タクシーの中で梶山くんとのやりとりを思い返す。


疑惑の夜のことはとにかく、一度バーに顔を出してみよう、という意志は固まった。


私の中で答えはきっと出ていて、単に背中を押してもらいたかったのかもしれない。


一夜の過ち、なのか、なんなのか。
分からないけれど、とりあえず蓮田さんに会いに行こう。


梶山君の、いつもの感じと違った一面を見たせいで、調子が狂っている気がする。


タクシーの揺れに身を任せながら、浅い眠りの中で、何度も同じ夢を見た。

蓮田さんとキスをしようとすると梶山君に邪魔をされる、というもどかしい夢。


アパートに着いてからは、どんな夢を見たのか覚えていないほどに、深い眠りについた。
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