小悪魔な彼の想定外な甘い策略
そもそも男運の悪かった私は、一人の人と長く安定した関係を築けたためしがない。


だから、知らなかったんだ。

『去年の今頃、ここ行ったよね』とか、そういう他愛のない会話が、こんなに嬉しいなんて。


積み重ねて来た日々が、エネルギーになるなんて。


穏やかで、平凡な日々の中にも勿論いい日や悪い日があるのだけれど。

智くんとだったら、なんとかなると思えるのは、本当に幸せで。


私は、暖かい気持ちで、春の空気を思いっきり胸に吸い込んだ。


「わ、ほら見てここ」


智くんの綺麗な指の差す先の記事に視線を合わせる。

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