小悪魔な彼の想定外な甘い策略
なんだか違う人みたいだもん。

……かっこいいのには、変わりはないけれど。


ダメだダメだ、脳内イケメン判定をしている場合じゃない。


「それじゃあ、また」


忘れ物がないかぐるりと部屋を見渡し、急いでドアに手をかける。


「ん、またしようね、すみれちゃん。そこ出て、階段降りれば、バーのカウンターのとこに出るから、そのまま店のドアから出られるよ」


……はい???いや、ご丁寧な道案内の前、なんて?

マタシヨウネって言った?何を……?


でも、そんなことを問い詰める時間なんて残っているはずもなくて、私はバタバタと言われた通り進んでいく。


迷うような造りではなく、すんなりと店の外へと出る。


もう、仕方ない。このまんま、職場に行くしかないでしょ。
ええと、確かロッカーの中に、夏の残りのボディー用のデオドラントシートとか入っていたはず。


この後のことで頭を一杯にすることで、昨日のことを深く考える恐怖から逃げていることは自分でもわかっていたけれど、私はとにかく急いで職場に向かった。
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