小悪魔な彼の想定外な甘い策略
すっと立ち上がり、私の前に立ちはだかる。


「あーあ、服着ちゃって、勿体ない。そのワンピだとギリギリ隠れるんだね」


……な、なにが?

意味が分からず、無意識に、蓮田さんの指し示す左の鎖骨辺りに手を伸ばす。


にやり、と、およそ蓮田さんには似つかわしくない笑い方で意味ありげに私を見る。



……って。なんにせよ、一刻も早くここを出ないと。


「あ、の……私、なにか変なことしてません、よね?とりあえず、もう仕事なんで行きます、あの、酔っ払ってすみませんでした」


一気に捲し立てて、ぺこりとお辞儀をし、バックを掴むと、出入口であろうドアに向かって進む。


「すみれちゃん」


蓮田さんの声が響く。
こんな声なんだ、と改めて感じる。


それこそなっちゃんの言っていた『お日様の下で出会え』の、意味は違ったけれど、こういう意味もあるのかも、と思う。


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