生神さまっ!



「ここに……」




後ろから聞こえる雄叫びのような声で、私のつぶやきは空へと消えてゆく。
けど、あたしの手を握っていた冬斗だけは、小さくうなずいた。




「…行こーぜ2人とも!」



「待て、夏樹!

…春乃がいなきゃ、無理だろ」



「おいおい俺をナメちゃいけねーよ冬斗!

春乃はさ…」




まるで、この戦いを楽しんでいるかのように。
綺麗に笑った夏樹は、言った。




「…もう、この中にいるよ」




そう言ってにっと笑った夏樹は、一目散に…佐保邸へと走っていった。



冬斗ははぁ、と1つため息をつくと、「行こう」と言う。




「ねえ、冬斗…春乃がここにいるって、本当?

…もしかして春乃ってもう…」



「…大丈夫。

春乃は弱そうに見えるけどさ、



実際、すっごく強いヤツだから」




冬斗もまた夏樹のようににっと笑うと、私の手を引く。


あ、あと1つ!言いたいことがあるんだけれど!



「ちょ、手握らなくても大丈夫だから…!」



ふと冷静になって考えてみたら…私と冬斗は、ふっつーに手を繋いでる。


結構恥ずいんですからね。こっちは!




「…まあ、繋いでた方が良いでしょ?安全だし」



「え、ちょ、まっ……」



冬斗に引っ張られるがまま、佐保邸の門まで走る。
門の前には…夏樹。


背中を私たちに見せてるせいで、彼の顔は全く見えない。
けど…なんで開かないのかな。

簡単に開きそうだけど。鍵とかない、昔の家の門造りだし…



「…夏樹」



「ん」



夏樹は手を前に出して、門にそっと触れる。



すると、門が異常な速さでガゴン!と開いた…!




「…結界、作ってあったんだよなー。

けど、まあ…


俺からしたら、いくら卑弥呼でも…弱っちい結界だけどな」




< 151 / 686 >

この作品をシェア

pagetop