生神さまっ!
夏樹の背中がどんどん遠のいていく。


それに連れて、私と冬斗も足を急ぐ。





門の奥。
嫌に静まり返った、佐保邸。



「…なんでこんなに静か…?

魔物もいないし…」




「…これが卑弥呼なりの、出迎え方なんだろうね」




パッと、冬斗が私の手を離し、攻撃準備をする。

…なぜか寂しいと思ってしまった私、恥ずかしすぎる。



温もりを失った右手をそっと左手で触れる。

ドキドキしちゃって、バカみたい。

まるで初恋みたい。そんなにウブでもない…はずなんだけど、私…




「おい、2人とも!

…なにか来る!!」




夏樹の声に、私と冬斗は…目の前にずっしり構えてある、大きな大きな屋敷を見つめる。


その入り口辺りから…とん、とん、と足音が聞こえてくる。



私に、出来ることは…

…ないのが、ホントに悔しい。




そして、それは突然。
大きな大きな屋敷の入り口に、ある人物が現れた。





色素薄目の茶色い髪に、茶色い瞳。
春乃と良い勝負なくらい白い肌に、
細い体つき。


端正な顔立ちをした、"美少年"という言葉が似合うような、
女装をすれば女の子にも見えるような男の子。




< 152 / 686 >

この作品をシェア

pagetop