生神さまっ!
そんなことない。




その、たった一言が言えずに、唇を噛む。





「…ごめん…私…」



…知らなくて。そう言おうとして、やっぱりやめた。



だって、言い訳にしか聞こえない。




「秋奈が謝ることじゃないと思うけどね、俺は。

佐保邸のことなんか知らなくて当然。人界に住んでる人は知らないのが普通なんだからな!」




夏樹の言葉に、ちょっと心が軽くなる。



けど…ごめんね、春乃。




「…春乃。そうくよくよしても、なにも起きないから…」




冬斗は春乃の、綺麗な青い目を見て言った。






「"春の玉"を、絶対に卑弥呼から奪うんだ。


日本で、桜が散らないうちに」





「…も、もちろん!」






春乃がぱあっと明るく笑う。



良かった…戻って…




…でも、きっと春乃は、佐保姫様が大好きなんだ。



大好きな人の家が奪われた…力も。




…私も、春乃の力になれるよう、頑張ろう。





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