腹黒司書の甘い誘惑
笹本先生の話によると、去年の八月、国語科の先生が結婚で仕事を年度末で退職する予定となり、空きができることを笹本先生は知った。

それを柊也さんに話したらしい。笹本先生も教師を目指していた柊也さんのことを気にかけていたんだと思う。

だから柊也さんの中では、わたしに教師になりたいと話した時点でもう先のことが色々と頭にあったのだ。

離れてしまう可能性がまったくなかったわけじゃないし、柊也さんの中で司書の仕事も楽しいものだったのはわかる。

だから寂しそうにしていたのだろうけど。
不安になるようなことを言うから、わたしも同調してしまった……。

あの時柊也さんの口許は緩んでいたのに、どうして深く考えてしまったんだろう!

十一月にすぐ採用されて、それを知ったわたしは拗ねて口をきかなかった。

本当は一週間くらい喋らないでいようと思ったけれど、身内でも手を抜かずしっかり試験を受けた柊也さんの頑張りはさすがだったし。

耳元で「なに拗ねてんの? ……声が我慢できないようなことするよ」と甘ったるく囁かれ仕方なく一日で声を出したのだった。

それから理事長と柊也さんの仲は以前よりも良好で、理事長はわたしまで誘ってくださり三人で食事をした。
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