腹黒司書の甘い誘惑
「倉橋さんにだって仕事があるでしょ。なのに毎日ここへ通わせられて、大変だよな?」

「えっと……」

口許を緩めながら首を傾げる笹本先生に困ったわたしは、柊也さんと笹本先生の顔を交互に見た。

「俺も考えてここへ来てもらう時間を夕方にしているし、酷く疲れるような仕事は頼んでいない。手伝うのが嫌だ、という言葉も聞いてないんだから別にいいだろ」

柊也さんは笹本先生を目尻で見ながらそう言った。

そしてすっと視線をわたしに向ける。

わっ、見られた、という感じでわたしは思わず目をそらしてしまった。

だって、なんて言えばいいのかわからないんだもの。

最初は強引に手伝いを決められて、なんでよ! という反抗心があったけれど、段々と手伝いをするのが当たり前みたいなのが自分の中で芽生えてきていて……。

だけど愛想よく「大丈夫ですよ」と言うのもなんだか気恥ずかしいものがあって無理。

わたしは適当に床を見ていた。

「……まあ、もうそろそろ俺一人でも大丈夫かなと思ってたところだけど」

え……?

わたしはすぐに顔を上げて柊也さんを見た。
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