腹黒司書の甘い誘惑
「明日から来なくても別にいい」

そっけない口調でそう言った柊也さんは、カウンター内の椅子に座って本に番号シールを貼る作業をはじめた。

来なくていいとか言われてしまったんですけど……。

じっと横目で柊也さんを見たあと、歩きだしてわたしは奥の本棚へと向かった。

なにショック受けてるんだろう。

わたしがここへ来ていたのは新しい本の整理を手伝うというものだったんだから。
柊也さんが来なくていいと言うなら通う必要はない。

だけど……、夕方のこの時間が無くなってしまうのは寂しいと思う。

「はあ……」

本棚の前に立ったわたしは溜め息を吐いた。

もう関わりたくないと思った相手だったのに、今は関わりが無くなることを悲しく思うなんてね。

今度は気持ちを切り替えるために息を吐き出したわたしは、バケツを置いてケースを取りに行き、本棚に並ぶ本を取り出していった。

ここの掃除はご無沙汰だったのか、少し埃っぽい。
一段目、二段目と下から順に本を取り出していったけど一番上の八段目はさすがにまったく手が届かなかった。

わたしは読書用のテーブル席から丸椅子を持ってきて、靴を脱いで椅子に立った。
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