THE OVER WORLD
第一章 出会い
少女は立ち尽くしていた。
きっと、ここにきたばかりなのだろう。
「お姉さん、もしかしてはじめてここに?」
俺は、好奇心だけのために彼女に話しかける。これが全ての始まりだった。

「...あんた、だれ?」

初対面で「あんた」呼ばわり。あまりいい印象は受けなかった。
しかし、俺はまたも彼女に話しかける。

「僕は利人(りひと)っていうんだ。そういう君はだれ?」

「...神崎美冷。」

美冷と名乗る彼女は、切れ長な瞳にすっと通った鼻。そして、美しい艶を持つ黒髪だった。きつい顔立ちだが、整っている。

「君はどうやってここにきたの?」

「わからないわ。」

「そっか。」

俺は、そっと笑みをこぼした。

「かわいそうに、君もだね」

「...ここは、どこなの?」


「さぁ、僕もわからないんだ。ただ皆はこの世界をロストと呼ぶ。」

「...なぜ?」


「さぁ、この世界の雰囲気からじゃないかな。」

俺は、つまんなそうにそう答えた。
少女は話をした。
前の世界のこと。友達のこと。親のこと。
ただ、自分がどういう人間だったのか全く答えようとはしなかった。俺も追求しようとしなかった。

「利人は、どこからきたの?」

「君と同じところさ。」

「君じゃないわ。美冷よ。」

「あぁ、ごめんよ。美冷。」

顔に出ていたが、案の定彼女は物事をはっきり言う性格だった。

「利人のことを教えて」

「僕について教えることはないよ。この世界のことならある程度は教えれるけど。」

「...」

「美冷、どうしたんだ?」

「ねぇ、利人って何歳?」

「...16歳くらいだよ。」

「なら同じ。気を使う必要はない。」


「どういうことかな?」

俺は一瞬美冷の言葉に動揺したが、すぐに質問を返した。

「あんた、僕とか言わないタイプの人間でしょ。」


「...」

まさか一人称に目を付けられていたなんて、さすがに驚いた。
たしかに俺は普段僕など使わない。ただ口調に関しては通常運転だったのだが。

「わかったよ美冷。これからは普段の俺でいるよ」

「うん、それがいい。」

思わず苦笑したが、これはこれでいいだろう。

「それで、美冷はこの世界について何か知りたいことはある?」

「...そうね、じゃあまず」


美冷は続けた。


「あの、大きな炉はなに?」



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