あるワケないじゃん、そんな恋。
「笑ってゴメン…」


せめて一言、たった6文字。それくらい流してきてもいいんじゃない?って思う。

周りにいた観覧車の係員まで巻き込んで、私を笑い者にしたんだからさぁ〜〜〜。


(まぁ…謝っても今更だけどね………)


もう羽田とは付き合わない…!って心に決めたし、これからは2人で飲みに行ったりもしない。

仕事中もなるべく顔合わさないようにしよう。

もうこれ以上、傷つきたくないもん……!



(でもさぁ………)




「うっ…!ぶっ……!や、やめっ……!やだっ……!だめっ……!」


ハァハァ…と荒い息が聞こえる。




飼い犬のペソの鼻息。
ホントにもう……激しい愛情表現なんだから……!



「ペソ……!ノンッ!」


「キュゥゥゥゥゥン……」



悲しそうな顔して項垂れる。
この顔、羽田がするのなら許してもいいけど………。



「おいで〜、ペソ〜〜」


尻尾フリフリしながら甘えてくる。
ペソは私の可愛い恋人……。


ーーーって言っても、メスだった……。



「ははは……残念………」


ぎゅっと抱き抱えて、手の中にある温もりを確かめる。

あの観覧車の中で、私が抱きついた羽田と同じくらいの温もり。




…直ぐには手離したくない…と思ってしまった。

もっと一緒にいたい……って、なんであんな事言ってしまったんだろう……。



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