ゾルダート~セルジュの憂鬱(4)
ロッタ~その少女、片思いにつき

朝の憂鬱

「ああ~!!もう、決まらねえ~!!」

 そんな声を上げているのは、そう、オレ、セルジュだ~。今日の憂鬱は何かというと、髪型がキマらないことなんだ~!!

 なんだそんなことって思われた気がする~。でも、オレにとっては、「ユユしき」事態だ~(この言葉、最近ルドルフボスの言葉で覚えたんだが、子供に言葉を習うってのも、どうかな~)。

 まあ、いつも出勤前には気合入れて髪型を整えているんだけどな~。実は、オレはもみあげだけ癖毛なんだよ~。どうセットしても直らない、頑固なやつでさ~、他の部分はサラサラなのに、もみあげだけ、くるっとカールしていて、オレの美意識に合わないんだよ~。一度気になり出すと、ホントに気になるよな、髪型って~。

 おっと、そんな話をしてる場合じゃない~。もう出かける時間だ~。オレは、頑固なもみあげに見切りをつけて、制服にゾルダートのジャケットをはおって、オレらしく着崩して、バイクにまたがった~。

 オレがバイクをいい気になって(もみあげは気になりつつだが)走らせていると、

「ぎゃーっ」

 と声がした~。オレの耳はそれが野郎の声だとすぐに認識した~。

(野郎なんて無視だな~)

……とはいかず、まあ一応何が起こったのか見てやろうと思って、バイクを声のした路地へと向かわせた~。

 「助けてください……」

 「助けるも助けないも、あんたがその子から離れなさい」

そこには、鬼の形相のレイ先輩が、武器の改造ナーデル(針なんだが、太くて長い、ある意味ダガーなんかより急所を刺せる怖い武器だ~)を手に、野郎にじりじりと迫っていた~。

「先輩……野郎を襲ってどうするんですか……それほど男日照りなんですか~?」

「セルジュ、バカなこと言ってないで、私を援護しなさい!でないと刺すわよ」

「へーへ~……」

オレが、黒い手袋をはめているのを確認した上で、よく研いだナイフをホルダーから取り出すと、そいつは、さらに顔を真っ白にして、きょろきょろ辺りを見回した~。どうやら、援護を待っているらしいが、残念だな、道はオレとレイ先輩でふさいじまってる~。ということは、後ろ手でつかまえている子を放さない限り、命の保証はないってことだ~。

「その子を、放すんだな~。かわいこちゃんなら、オレに託せ~」

「かわいこちゃん、じゃと?」

野郎の背後から、聞き覚えのある声がした~。ま、まさかこの声は……。

「セルジュ!やはりわたくしを想ってくれているのじゃな!?」

野郎の背中からひょっこり顔を見せたのは、最近入ってきたばかりのメンバー、ロッタだ~。このロッタは、初めて会った時から、オレに異常な好意を寄せている女の子だ~。だが、言葉遣いにどことなくばばくさいところがあって、オレはいまいち気を引かれなくて、ロッタの片思いに終わってるんだな~。

「おいおい、なんでロッタがつかまってるんだよ~。自力で逃げろよ~」

「わたくしは、きゃしゃで可憐じゃからな」

と言いながら、ロッタは軽々と護身用ダガーを操り、野郎の肩をみね打ちした~。そんなことができる女子は、きゃしゃでも可憐でもないぜ~。奴が悶絶している間に、オレ、レイ先輩、ロッタはすたこらとその場を後にした~。ヤバい事件でもない限り、オレたちは武器を使わないことにしてるからな~。
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