おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―







「たっだいまー!」


マンションのエントランスで部屋番号を呼び出し、マイクに向かって声をあげると、

インターホンの向こうから、苦笑いを含んだ声が『声でけえよ』と答えた。


『いま開けるから大人しくしてろ』

「はあーい」


すぐにエントランスの自動ドアが開く。

私はロビーを抜けて、エレベーターに乗り込んだ。


最上階についてドアが開いた瞬間。


「おかえり、うさ」


トラの笑顔が出迎えてくれた。


「ただいまー。お腹すいた!」

「はいはい、もう用意できてますよ」

「さすがトラ!」


嬉しさのあまり、私はトラの脇腹をつつく。

トラは「いてて」と言いながら私のバッグをさっと奪い取った。


なんともさりげない気づかい。

うーん、お見事。


トラのやつ、なんて紳士的なんだ。

女の喜ぶコツをよく心得ていらっしゃること。


でもまあ、本人としては、それを狙ってやってるわけじゃないんだよね。

だって、ものすごく自然な仕草なんだもん。

そうするのが当たり前って思っているのが伝わってくるのだ。


そりゃモテるはずだわ、と私はいつものように思う。

ほんっと、天然の女タラシだな、こいつは。



< 34 / 190 >

この作品をシェア

pagetop