おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「……………はっ?」
声がひっくり返ってしまった。
そりゃ当然でしょう。
だって、だって―――婚約者?
トラの婚約者!?
そんなの聞いてませんけど!
「………ええと、ちょっと、ちょっと待って………。
あなたが言ってるのって、日比野悟のことですよね?」
確かめるように訊ねると、彼女―――五十鈴さんはやっぱり満面の笑みのままでこっくりと頷く。
「ええ、そうですわ。日比野悟さんが私の婚約者ですの。
ところで、失礼ですけど、あなたはどちら様?」
そう訊ね返されて初めて、相手に誰何しておきながら自分は名乗っていないことに気がついた。
「あ、ごめんなさい! 失礼いたしました。
私、宇佐美真子と申します」
「まあ、宇佐美さんとおっしゃるの。初めまして。
それで、あなたは悟さんの?」
「はい、私は………ええと」
答えかけて、思わず口ごもる。
どう答えるのが正解なのか。
正直に『同居しているルームメイトです』と答えるべきか。
でも、真偽のほどはよく分からないけど、相手は自称・トラの婚約者だ。
安易に『同居中です』などと答えてしまったら、どんな事態になるか予想もつかない。
ぐるぐると悩んだ末、私はにこやかに微笑みながら、
「………同僚です」
と答えた。