クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
先輩は迷惑そうに冷ややかな目で私を一瞥してそう言うと、私の前からいなくなった。

普段優しくて頭が良くてイケメンの先輩が、あんな冷たい目をするなんて思わなかった。

ううん、私は彼の事なんて何も知らなかったのかもしれない。

あまりのショックで振られたのに涙も出なかった。

あれから十年も経ったのに、私の時間はまだ止まったまま。

先に進みたい。

そう思っても、あの時の先輩の私を蔑むような顔が浮かんで他の人を好きになれない。

恋愛をするのが怖くなった。

もう一生人を好きにはならないかもしれない。

そう思っていたのに、何で先輩にこんな形で再会しちゃったの?







「うちの課でやってもらうのは、庶務全般、外国の顧客がほとんどだから英語の電話も取ってもらうけど、問題ないかな?」

今日は大学時代の恩師に紹介された有名自動車メーカーの面接日。私は派遣先の課長補佐の真田さんの質問に、緊張した面持ちで答えた。
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