愛の胡蝶蘭<短編>
愛の胡蝶蘭
雄大「蘭~!」


和希「朝からそんな叫ぶんじゃありせんよ相葉さん。」


『おはよ―、雄、和。』


高校3年生の、春。


まだまだ明るくて、元気で、
仲良しで、3人いつも一緒で。


楽しかった、ただ、それだけ。





『やだっ………っ、ゆう……ッ、…!!』


高校3年生の、夏。


彼は、突然いなくなった。


私達二人を残して、いなくなった。








『…っ……ッ!!……ふぅ………、』


また、夢を見ていたらしい。


楽しい夢が、一気に悲しみのどん底へ突き落とされる夢。



私、白井 蘭、大学二年生。


和「………蘭。」


彼は、岡本和希、大学二年生。


『和、ふふ、また夢見ちゃったみたい。』


笑う、
もう泣かないと決めたから。


もう一人の幼馴染、三村雄大。


彼が死んでしまったのは、高校3年生の時だった。


あまりにも突然のそれは、私と和の心に大きな穴を開けた。



20歳を迎える私達と、


17歳のままの雅。


私は、



私は、



雅が、好きだった。



ずっと、好きだった。



幼馴染として、雄と和が好きで。



一人の男の人として、雄が、好きだった。



彼がいなくなって、もうすぐ2年。


私は未だ、雄への想いを、過去のものには出来ずにいた。


『和っ!ご飯行こ。』


和「はいはい。」


 

消えない。



どれだけ笑っても、


どれだけ消そうとしても。



ねぇ、雄。

そっちはどうですか?

あの皆を元気にする笑顔は健在ですか?




ねぇ、和。

私は、何も知らなかったね。

何も知らない、知ろうとしない私の側に、ずっといてくれたのは和、貴方だけだったね。




大学二年、春。


雄が、死んで、2年目の夏がやってくる。


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