俺様当主の花嫁教育
腰紐を締めてもらってなんとなく形が出来上がると、私は袖を手に持ったまま自分を振り返ってみた。


「綺麗な着物……」


ホウッと息をつきながら、気分はほとんど『見返り美人』だ。


「御所車よ。古典的だけど着こなすのはそれほど難しくない、初心者向け。うちの母が嫁入りの時に着たものだからかなり上質だし、志麻ちゃんでも貧相に見えることはないわ」


いい気分に呆気なく水をさされる。
いまだ名前も知らないけれど、彼女はやっぱり残念なくらい毒舌だ。


思わず肩を竦める私に、彼女は眉を寄せて憂い顔を浮かべると溜め息をついた。


「志麻ちゃん、やっぱりお作法どころか馴染みもないど素人ってことよね」

「お、作法……ですか?」


聞き返したけど、その言葉のイメージから和風の香りが漂うのを感じた。


「いくら大寄せって言っても、着物を着せるからにはお点前に参加させるつもりだろうし……」

「は?」

「しかも東和のお点前じゃ、さすがに志麻ちゃん赤っ恥かくわ。だから相当恨みを買ってるんだと思ったんだけど」

「え?」


全く話が見えないまま、何事かと尋ねようとした時、私の前に膝立ちになった彼女が私の腰に腕を大きく回して、


「グエッ……」


思いっきり紐を締め付けられて、私は変な声を上げてしまった。
< 20 / 113 >

この作品をシェア

pagetop